じんじのきほん 〜採用編〜

前回は「じんじんきほん 〜募集編〜」で採用前の募集についてお話しました。

今回は、その後の採用編について進めていきます。

ここでお話しするのは、ごくごく基本的なことです。

そして、人間はけっきょく感情の生き物なので採用にしても一言で語れないのが現実です。

良い採用をするというテーマではなく、どちらかというとここでは採用に関するルールについてお話します。

労働契約と労働条件の明示

労働契約の意義

労働契約は、労働者が使用者(会社)に使用されて労働する義務を負い、使用者が労働者に対して賃金を支払う義務を負うことをいいます。

労働契約書がなくても、口頭での意思の合意があれば成立します。

ただ、お互いを守る意味でも労働(雇用)契約書または雇用通知書は作って署名をもらっておいた方が無難でしょう。

労働契約の効力・禁止事項

労働(雇用)契約は、労働者と使用者の合意によって成り立つものです。

しかし、どんな内容であっても労働基準法や労働協約を下回るような内容は無効となります。

例:労働契約での時給が800円だったが、労働基準法の最低賃金は1000円だった。

→この場合、当然ながら労働基準法が優先されるので時給800円での雇用は無効となります。

また、労働契約を結ぶうえで禁止されていることがあります。

  1. 違約金・損害賠償額の予定(例:社有車で事故をおこしたら、一律10万円支払うこと)
  2. 前借金と賃金の相殺(先にお金を借りて、働いた賃金で返済すること)
  3. 強制貯金(賃金の一部を強制的に貯金させ、会社が管理すること)

労働条件の明示

労働(雇用)契約を結ぶ際には、必ずしも書面で取り交わす必要はありません。

雇用契約とは別に労働条件を明示をする必要があります。

けっきょくは同じことなのですが、「雇いますよー」ということには書面は必要ありませんが、「こんな条件で働いてくださいねー」には書面などの明示がいるということです。

その明示について必ず盛り込まないといけない内容を紹介します。

  1. 雇用契約の期間
  2. 有期労働の場合、更新の基準(どうなれば更新できるか)
  3. 就業の場所・従事すべき業務
  4. 始業・終業の時刻、残業等の有無、休憩時間、休日、休暇、交代勤務等について
  5. 賃金、締めと支払い時期
  6. 退職に関する事項(解雇の事由含む)
  7. 昇格に関する事項(口頭でも可)

また、退職手当など上記の内容に盛り込んでない取り決め事項も明示する必要があります。

  1. 退職手当の適用範囲、決定・計算・支払い方法・時期
  2. 臨時に支払われる賃金・賞与、および最低賃金に関する事項
  3. 労働者に負担させる食費や作業用品について
  4. 安全衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰・制裁に関する事項
  8. 休職に関する事項など

採用時の提出書類

採用時の提出書類について

採用選考時に提出してもらう書類と、採用決定後に提出してもらう書類はそれぞれ違った意味を持ちます。

採用選考時・・・履歴書や職務経歴書など

採用決定後・・・労務管理の必要な書類(具体的には下記に記載)

  • 採用手続き上必要となる書類(年金手帳・雇用保険被保険者証・扶養控除等申告書など)
  • 本人に関する事項を確認する書類(住民票記載事項証明書・卒業証明書など)
  • 採用にあたり同意・確認を求める書類(誓約書・個人情報同意書など)

会社によってさらに必要となってくるものは考え方で異なってきます。

車の運転が業務上必須なので運転免許証の提出など、必要に応じて提出をしてもらいましょう。

入社時の誓約書について

誓約書そのものに法的な効力はありません。

ただ、今後一緒に仕事をしていくうえで大事にしたい内容や、会社の従業員であるということへの自覚を促す意味でも取っておいた方が良いでしょう。

作成される場合に盛り込んでおいた方が良い内容をまとめました。

  • 誠実勤務義務(ちゃんと働きます)
  • 会社の信用・名誉保持義務(会社の名前を汚すことはしません)
  • 秘密保持義務(会社の情報や従業員の情報などは漏らしません)
  • 損害賠償義務(会社に損害を与えた場合、協議の上で損害を賠償します)

また、昨今ではSNSでの普及で個人が影響力を持っている時代です。

ソーシャルメディアへのリスク対応も注意点や誓約書を作成して提出してもらうことも大事になってきます。

身元保証書の効力とポイント

身元保証書とは?

もし従業員が会社に何らかの損害を与えた場合に、身元保証人が連帯して損害額について賠償をすることを約束する書類です。

ただし、損害額は無条件に全額請求できるわけではありません

過失割合や従業員の任務の事情を勘案した上で、裁判所が合理的な額を定めることになります。

横領や窃盗などは別として、過失損害については20%〜30%で賠償を命じられるケースが多いようです。

身元保証になれる人は?

法的なルールがあるわけではありませんが、何か有事のときに請求できなれば意味がありません。

ですので多くの場合は、独立生計を営む親や兄弟と言ったケースが一般的です。

厳しくする場合は、架空の人物でないか印鑑証明や住民票の提出もしている会社もあるようです。

身元保証人の保証期間は?

特段の定めがない場合は3年間となります。

定める場合の上限は5年間となります。

自動更新をすることはできませんが、合意により更新することは問題ありません。

採用時の健康診断

雇入れ時の健康診断

従業員を雇う時は、医師による健康診断を行わなければいけません。

ただ、現実として入社時に行うことはなかなか難しいので

入社する3ヶ月前までの健康診断結果を提出することで省略しているケースが多いです。

また、必要な場合の従業員は1年以上の雇用見込みがあり、パート社員であっても正社員の1週間の労働時間の4分の3以上となる場合は必要となります。

雇入れ時の健康診断の目的

「採用が決定した者に対する、適正配置、入社後の健康管理の基礎資料なる者」

厚生労働省より引用

非常に難しい問題ですが、健康診断の結果を持って採用を取り消したり従業員に対して不利益な配置転換をすることは慎重に検討する必要があります。

万が一、そのようなケースが発覚した時は当人としっかりと話し合いトラブルにならないように注意しましょう。

健康診断の結果について

会社では定期健康診断が義務付けられています。

その健康診断の結果は従業員に対し速やかに通知することも義務付けられていますので注意しましょう。

健康状態がよくないことを知ったうえで業務に従事させていたり配慮がなかった場合はには損害賠償が生じる可能性もあります。

試用期間と本採用拒否

試用期間とは?

従業員としての適性を判断するために、採用にあたって一定の期間を定め、勤務態度や性格、能力、技能などを見定める期間のことです。

ただ、試用期間は必ず定めないといけないものではなく、会社に自由裁量があります。

試用期間の長さ

特に法律での定めはありません。

一般的には、3ヶ月程度が妥当です。

最長でも6ヶ月が一般的だと言えます。

本採用拒否

試用期間とは、解約権留保付の労働契約と言えます。

かんたんに言いますと、一定期間、本人の調査や観察が十分にできるまで、最終的な判断を留保している状態のことです。

試用期間中に従業員として不適格性が認められ、本採用ができない場合は、本人に伝えなくてはなりません。

本採用拒否は解雇

本採用拒否とは試用期間であっても労働契約を打ち切ることになるので、「解雇」にあたります

本採用拒否については、就業規則等に普通解雇とは別に列挙しておいた方が良いです。

本採用拒否となる主な理由例

  • 遅刻や無断欠勤が多く、勤務成績が不良なこと
  • 職務遂行能力が低く、指導しても能力向上の見込みがないこと
  • 正当な理由もなく、指示命令に従わない
  • 言動が不適切で社内秩序を乱す
  • 協調性がなく円滑な共同作業に支障をきたす
  • 重要な経歴について詐称がある

と挙げてみましたが、そもそも論外ですね。

こんな人材を採用しないことが1番のリスクヘッジです。

ただ、やっぱり人が人を判断するのは難しいですし、入社してからも環境によっても変化します。

一緒にいて楽しい人と一生懸命夢中になれることが大事ですね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

ともまる